
「借地に建つ実家を売りたいが、地主さんにどう切り出せばいいか分からない」。大森や池上で借地権付きの住宅を相続された方から、私たちが最も多くいただくご相談です。借地権の売却には、価格を決める前に「地主の承諾」という関門があります。この記事では2026年10月時点の法令と国税庁の取扱いをもとに、承諾料の相場の考え方と、話をこじらせずに合意へ進める手順を整理します。
借地権の売却に地主の承諾が必要な理由

私たち大森山王エステートは、大田区で40年にわたり売買・賃貸・管理を手がけてきた地域密着型の不動産会社です。大森・池上・蒲田には戦前から続く借地が今も残っています。
建物は自分のもの、土地は借りているという構造
借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利です。建物は借地人の所有物ですが、買った人は土地を使う権利も引き継がなければ住めません。その賃借権を譲り渡すには地主の承諾が必要とされ(民法612条)、承諾のない譲渡は契約解除の理由になり得ます。
承諾がないまま話を進めるとどうなるか
承諾を得ないまま売買契約だけを結ぶと、買主は建物を買ったのに土地を使えないまま取り残されるおそれがあります。借地借家法14条は、地主が譲渡を承諾しないとき、建物を取得した第三者が地主に建物を時価で買い取るよう請求できると定めています。ただしこれは建物を手放して代金を受け取る仕組みであり、買主がその土地に住み続けられるわけではありません。実務では、地主の承諾または裁判所の許可が得られることを条件に売買契約を結びます。
承諾料(名義書換料)の相場はどう決まるか

目安は借地権価格のおおむね10%
借地権の譲渡を承諾してもらう際に地主へ支払う金銭は、譲渡承諾料または名義書換料と呼ばれます。法律に金額の定めはなく、当事者の合意で決まるのが原則です。ただし、地主が承諾しない場合に裁判所が承諾に代わる許可を与える手続きでは、その許可を「財産上の給付」に係らしめることができると定められており(借地借家法19条1項)、その水準として借地権価格のおおむね10%が実務上の目安として語られてきました。交渉の場でも、まずはこの10%前後が出発点になります。
先に借地権そのものの価格を把握する
10%という数字は、借地権価格に対する割合です。相続税評価では「更地価格×借地権割合」で計算し、借地権割合は国税庁の路線価図に表示されています。たとえば更地の時価が約5,700万円、借地権割合60%の土地であれば、借地権の価格はおよそ3,400万円、承諾料の目安は340万円前後という計算になります。実際の取引価格は接道状況や建物の残存価値で上下しますので、路線価の数字だけで決めず、必ず査定で裏を取ってください。
建替承諾料・更新料と混同しない
借地では、建て替える際の建替承諾料、木造から鉄筋コンクリート造へ変える条件変更承諾料、更新時の更新料など、場面ごとに異なる名目の金銭が登場します。譲渡承諾料はあくまで「売るとき」のものです。売却と更新の時期が重なると、地主から複数の名目をまとめて提示されることがあります。宅地建物取引士の立場から申し上げると、何に対する対価なのかを一つずつ分けて確認することが、過大な負担を避ける最短の方法です。借地権の基本的な仕組みは借地権のメリット・デメリット解説でも整理しています。
地主との承諾料交渉を円滑に進める4つの手順

①契約書と登記を先に揃える
交渉の席に着く前に、借地契約書、地代の領収書、建物の登記事項証明書を集めます。契約書が見当たらない借地は、大田区の古い住宅地では珍しくありません。その場合でも、地代の支払い履歴と建物の登記が権利を裏づけます。借地借家法10条が、登記された建物を所有していれば借地権を第三者に対抗できると定めているためです。なお相続で引き継いだだけなら民法612条の譲渡にあたらず、名義書換料を支払う義務は原則ありません。ただし建物が亡くなった方の名義のままでは売却が進まないため、相続登記は早めに(手続きは司法書士にご確認ください)。
②買主候補の人物像を先に伝える
地主が最も気にするのは、金額よりも「誰が新しい借地人になるのか」「地代を払い続けてもらえるのか」です。私たちの実感として、承諾料の金額から切り出すより、買主の家族構成・職業・資金計画・建て替え予定といった情報を先にお渡ししたほうが、承諾までの期間は短くなります。法律上も、譲渡によって地主に不利となるおそれがないことが許可の判断材料とされています(借地借家法19条1項・2項)。交渉の入口で人物像を示すのは、法の考え方にも沿った進め方です。
③「地主に売る」「一緒に売る」案も並べる
承諾料の金額で折り合わないときは、選択肢を増やすと話が動き出します。地主に借地権を買い取ってもらう、逆に底地を買い取って所有権にまとめる、底地と借地権を同時に第三者へ売って代金を配分する、敷地を分け合う等価交換といった方法です。いずれも地主側に利益があるため、承諾料だけの綱引きから抜け出せます。特に底地と借地権をまとめて売ると、別々に売るより総額が上がりやすくなります。
④合意した条件は必ず書面に残す
承諾料の金額と支払時期、名義変更後の地代と契約期間、将来の建て替えの可否までを承諾書に明記します。口頭の了解のまま決済へ進むと、引渡し直前に条件が蒸し返されます。承諾書の文言は売買契約書と整合させる必要があるため、仲介会社と司法書士の双方に確認してもらってください。相談先の選び方は大田区で借地権を売却するならどこに相談すべきかもあわせてご覧ください。
話がまとまらないときの手続きと税金の確認

裁判所に承諾に代わる許可を求める(借地非訟)
地主が合理的な理由なく承諾しない場合、借地人は裁判所に許可を申し立てられます(借地借家法19条1項)。東京23区内の借地は東京地方裁判所民事第22部が担当し、裁判所は特に必要がないと認める場合を除き、鑑定委員会の意見を聴いて判断します(同条6項)。代理人は弁護士に限られ、審問は非公開です。地主側にも、自ら建物と借地権を買い取る「介入権」の申立てが認められています(同条3項)。申立て後に和解で決着する例も多く、手詰まりを動かす手段になります。
承諾料は譲渡費用になり、居住用なら3,000万円控除も使える
地主へ支払った名義書換料は、譲渡所得の計算上の譲渡費用に含まれます(国税庁タックスアンサーNo.3255)。住んでいた建物とその敷地の借地権を一緒に売る場合は、居住用財産の3,000万円特別控除の対象です(同No.3302)。税率は譲渡した年の1月1日時点の所有期間で判定し、5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。基準日は引渡し日ではない点にご注意ください。個別の税額は税理士にご相談ください。
まとめ:順番を守れば借地権の売却は動く
借地権の売却は、価格交渉より先に地主との合意形成で決まります。借地権価格を把握して承諾料の目安を持ち、買主の人物像を先に伝え、底地の同時売却まで選択肢に乗せる。この順番なら、大森や池上の古い借地でも話は進みます。まずは借地契約書と建物の登記事項証明書を揃えてください。大田区での不動産売却では借地権の査定と地主との折衝を一体でお手伝いしています。大田区の不動産のご相談は、売却の見通しが立たない段階から承ります。
