
大田区でアパートや賃貸マンション、貸店舗を経営されているオーナー様から、「5年ルールで相続税が上がると聞いた」というお問い合わせをいただくようになりました。2027年1月から、取得して5年以内の賃貸用不動産は相続税・贈与税の評価方法が変わる見込みです。ただし対象となる物件の条件は限られています。何がどう変わるのか、ご自身の物件が対象になるのか、状況別の対応を順に整理します。
5年ルールで変わるのは相続税・贈与税の評価です

売却益の税金や固定資産税は変わりません
今回の見直しは、相続税と贈与税を計算するときの不動産の評価方法に関するものです。売却したときにかかる譲渡所得税や、毎年の固定資産税の計算には影響しません。また、いったん対象になった物件も、取得から5年を超えれば従来どおりの評価に戻ります。評価が重くなるのは取得後の5年間に限られる、という構造です。
対象は2つの条件が重なる場合に限られます
対象になるのは、買った、または建ててから5年以内の賃貸用不動産であり、なおかつその5年が経つ前に相続や贈与が起きる場合です。どちらか一方でも当てはまらなければ、評価方法はこれまでと変わりません。影響がはっきり出るのは、ここ数年で収益物件を取得された方と、これから建築を予定されている方です。
2027年1月から何が変わるのか

根拠は税制改正の大綱と、国税庁の通達案
2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」に、課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産は、「通常の取引価額」に相当する金額で評価する、と明記されました。これを受けて国税庁は2026年9月18日に「貸付用不動産の評価について(案)」を公表し、10月18日まで意見公募を行っています。方針は決まっていますが、通達はまだ案の段階です。
路線価ベースから「通常の取引価額」へ
これまで賃貸用の土地は路線価をもとに貸家建付地として、建物は固定資産税評価額をもとに貸家として評価され、いずれも一定の評価減がありました。新しい取扱いではこれらが適用されず、市場で売買される価格に相当する金額で評価されます。ただし取得価額が取得時の相場に相当すると認められる場合は、土地は取得価額に地価変動率を掛けた金額、建物は取得価額から償却費を差し引いた金額の、それぞれ80%で評価できるとされています。
大田区の一棟マンションで試算すると
2026年に大森エリアで一棟賃貸マンションを3億円(土地1億8,000万円・建物1億2,000万円/RC造)で購入し、3年後に相続が発生したと仮定します。路線価の上昇を年5%、借地権割合60%、借家権割合30%、満室、建物の固定資産税評価額を取得価額の50%と置いた概算です。
| 従来の評価 | 新しい評価 | |
|---|---|---|
| 土地 | 約1億3,669万円 | 約1億6,670万円 |
| 建物 | 約4,200万円 | 約8,966万円 |
| 合計 | 約1億7,869万円 | 約2億5,636万円 |
評価額はおよそ1.4倍、差額は約7,767万円です。相続税の税率が40%適用される層であれば、税負担は約3,107万円増える計算になります。税率は相続人の構成によって変わり、前提の置き方でも結果は動きますので、実際の試算は税理士にご依頼ください。
ご自身の物件が対象かを見分ける3つの質問
質問1|建物を貸していますか
対象は、全部または一部が借家権の目的となっている家屋と、その敷地です。住宅に限らず、店舗・事務所・倉庫として貸している建物も含まれます。一方で、ご自宅、自社で使っている建物、更地、建物のない駐車場は対象外です。大田区は町工場や倉庫の賃貸も多い地域ですので、住宅以外もお持ちの方はあわせて確認してください。
質問2|買った、または建てたものですか
要件は「対価を伴う取引による取得または新築」です。代々受け継いできた土地と建物は、それ自体では対象になりません。ただし、有償で取得された物件をその後に相続や贈与で引き継いだ場合は、もとの取得から5年以内であれば対象に含まれます。親が最近購入した収益物件を相続した、というケースはご注意ください。
質問3|引渡しから5年以内ですか
5年は、相続や贈与があった時点から遡って数えます。起算点は原則として引渡しの時ですので、契約日ではなく決済・引渡しの日付を確認してください。いまの時点でいえば、2022年ごろ以降に取得した物件が射程に入ります。この3つすべてに「はい」が付く物件だけが、今回の見直しの対象です。
タイプ別|いま何をすればよいか
ここまでの内容を状況別に整理すると、次のとおりです。
| 当てはまる状況 | 影響 | いますること |
|---|---|---|
| 5年より前から持っているアパート・貸家 | ありません | 対応は不要です。空室対策と修繕計画を続けてください |
| 2022年ごろ以降に買った・建てた収益物件 | 直接受けます | 取得価額のわかる書類を集め、5年が経過する日を確認してください |
| これから自分の土地にアパートを建てる | 経過措置に当たる可能性 | 着工時期と経過措置の関係を、建築会社と税理士に確認してください |
| 生前贈与を考えている | 贈与の時期で評価が変わります | 贈与は他の要件も多いため、年内と年明けの比較を税理士に依頼してください |
| 不動産小口化商品を持っている・検討中 | 取得時期にかかわらず対象 | 相続対策が目的なら前提が変わります。販売会社に確認してください |
| 売却を考えている | ありません | 売却益にかかる税金は変わりません。収支と修繕計画で判断してください |
これから建てる方は、経過措置の確認を
通達案には経過措置が置かれています。通達が定められる日までに、その日の5年より前から所有している土地の上に新築した家屋(同日時点で建築中のものを含む)は、対象から外れる内容です。「建築中」とは、同日までに請負契約が結ばれ、工事が行われ、費用の一部以上が支払われている状態を指します。ただし、その日付はまだ公表されていません。経過措置に間に合わせること自体を目的に計画を前倒しせず、もともとの建築計画がこの時期と重なるかどうかを確認する順番をおすすめします。
地価が上がっているエリアほど差は開きます
土地の地価変動率は、相続があった年の路線価を取得した年の路線価で割って求めます。上昇しているエリアほど、評価額は取得価額より膨らみます。東京都財務局が公表した令和8年地価公示では、大田区の対前年変動率は住宅地がプラス7.9%、商業地がプラス9.7%、全用途でプラス8.8%でした。上昇の背景は【2026年最新】大田区の地価上昇理由で整理しています。資産価値が上がること自体は歓迎すべきですが、相続税の面では負担が重くなる方向に働くと見込まれます。
まとめ
5年ルールは2027年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から適用される見込みで、通達は2026年10月時点でまだ案の段階です。対象となるのは「貸している」「買った・建てた」「引渡しから5年以内」の3つがそろう物件に限られます。まずはお持ちの物件をこの3点で一覧にしてください。該当する物件があれば取得価額の資料を集めて税理士に試算を依頼し、該当しなければ、評価方法はこれまでどおりです。
