
「そろそろ売ったほうがいいのか、それとも待つべきか」。2026年秋、大森や蒲田で物件をお持ちの方から最も多くいただくご相談です。判断材料として見落とされやすいのが、新築住宅がどれだけ着工されているかという供給側の数字です。国の統計では新設住宅着工戸数の減少が続いており、この動きは中古市場にも及びます。大田区で40年、地元の街並みを見つめ続けてきた大森山王エステート(サンキュー産業)の宅地建物取引士が、供給という切り口から2026年秋の判断軸を整理します。
新設住宅着工戸数が示す、2026年秋の住宅供給の縮み方

まず押さえておきたいのは、全国で新しい住宅がつくられる量そのものが減っているという事実です。地価や成約価格といった「値段」の指標より一歩手前にある、住宅の「量」の指標です。
3年続いた着工戸数の減少
国土交通省の建築着工統計によると、2025年の新設住宅着工戸数は74万667戸で前年比6.5%減となり、3年連続の減少となりました。さらに2026年4月末に公表された2025年度(令和7年度)の集計では前年度比12.9%減の71万1,171戸まで落ち込み、2026年2月の月次でも前年同月比4.9%減と減少が続いています。一時的な変動ではなく、複数年にわたる基調として現れている点が重要です。
減少の背景にある建築コストと基準の引き上げ
減少の要因は主に二つと見られています。ひとつは資材費・人件費の上昇による建築コストの高止まり、もうひとつは省エネ基準や構造安全性の基準が段階的に引き上げられたことです。2026年4月からは建築物省エネ法の強化により新築戸建の基準がさらに上がりました。基準の中身と大田区での物件選びへの影響は【2026年】省エネ法強化で大田区の新築戸建選びはどう変わる?で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
大田区では「土地の条件」がさらに供給を絞る
大田区は準防火地域が広く、狭小地や旗竿地、高低差のある土地も多いエリアです。こうした敷地では建築コストが上がりやすく、そもそも新築を建てられる土地自体が限られます。全国的な着工減に加えて、地域固有の条件が新規供給をさらに細くしている構図です。
新築が絞られると中古価格が下支えされる仕組み

住宅を探している世帯の数が急に減るわけではありません。新築の選択肢が減り価格が上がれば、その需要はどこへ向かうのか。ここが今回の核心です。
予算が合わなくなった層が中古へ移る
新築の販売価格が上がると、同じ予算で購入できる新築の選択肢が減ります。結果として、駅からの距離や広さを優先する世帯が中古住宅・中古マンションへ検討を広げます。大森・蒲田・大井町といった通勤利便性の高いエリアでは、この置き換えが起こりやすいと考えられます。
既存ストックの相対的な価値が上がる
新築が少ない時期は、すでに建っている住宅の希少性が相対的に高まります。とくに新耐震基準を満たし、管理と修繕積立金の状況が良好なマンションは、買い手から見て「今すぐ入居できて条件も読める選択肢」になります。地価そのものの動きについては、2026年の大田区公示地価が前年比平均7.5%上昇し、蒲田・羽田周辺でとくに高い伸びを示しました。その要因である新空港線(蒲蒲線)や再開発の詳細は【2026年最新】大田区の地価上昇理由は?にまとめています。
ただし「すべての中古が上がる」わけではない
供給不足は市場全体の下支え要因ですが、個別物件の価格を保証するものではありません。管理状態が悪いマンション、再建築不可の土地、擁壁の補修が必要な物件などは、需給が締まっている局面でも買い手が慎重になります。マクロの追い風と個別評価は切り分けて考える必要があります。
供給が細い局面で、売り手が確認しておきたい3つのこと

供給が絞られた市場は、売り手にとって条件が整いやすい環境と言えます。ただし「待てば必ず上がる」と考えるのは危険です。以下の3点を確認してください。
自分の物件が「代替先」になれるかを見る
新築から流れてきた買い手が比較するのは、駅距離・広さ・管理状態・耐震基準です。この4点で説明できる物件なら、供給不足の恩恵を受けやすい立場にあります。逆に説明が難しい要素がある場合は、リフォームや資料の整備で補える範囲を先に検討したほうが結果につながりやすくなります。
金利と税制のスケジュールを重ねて考える
供給環境が価格を支える一方、住宅ローン金利の上昇は買い手の購買力を下げる方向に働きます。また2027年1月からは相続税の「5年ルール」改正により、取得から5年以内の貸付用不動産が時価評価となります。需給だけでなく、こうした期日を自分の事情に重ねて判断することが大切です。年内引き渡しを狙う場合の具体的な逆算手順は年内引き渡しは9月が最終ライン|大田区の売却逆算カレンダーをご確認ください。
相場の「方向」と「水準」を分けて確認する
着工統計が示すのは市場の方向性です。ご自身の物件がいくらで売れるかという水準は、同じマンションの成約履歴や近隣事例から個別に確認する必要があります。大田区での不動産売却を検討される段階で、まず現在の水準を把握しておくと、売る・待つの判断に根拠が持てます。
同じ局面で、買い手が焦らずに見極める判断軸

供給不足と聞くと「早く買わないと」と急ぎたくなりますが、慌てた購入がいちばん後悔につながります。買い手側の見方を整理します。
「供給不足」は値上がりの約束ではない
新築着工の減少は中古価格を支える要因のひとつにすぎず、資産価値が必ず上がると言い切れるものではありません。金利、世帯数の推移、エリアごとの人気の移り変わりなど、逆方向に働く要因も同時に存在します。将来の価格は上下いずれの可能性もあると考えて、返済計画に余裕を持たせてください。
競合が増えるのは「条件の良い物件」に集中する
供給が細い市場では、条件の整った物件に買い手が集まり、条件に説明が必要な物件は動きが鈍くなります。つまり全体が売り手優位になるわけではなく、二極化が進みます。妥協できる条件と譲れない条件を先に決めておけば、競合が薄い側で選択肢を見つけられる余地があります。
大森・山王エリアで実際の水準を確かめる
大森駅から山王一帯は高台と坂が入り混じり、同じ「駅徒歩10分」でも体感が大きく変わります。エリアの特徴は山王・大森エリアのご紹介をご覧ください。中古相場を自分の手で確認する具体的な方法は大森・山王で中古マンションを買う|2026年夏の相場の見方で解説していますので、大田区での物件購入を検討する前の準備としてお役立てください。
経験豊富な営業マンからのワンポイントアドバイス:供給が細い時期こそ、内見の順番が結果を左右します。まず条件の良い物件を1件見て基準をつくり、そのうえで比較検討に入ると、判断の速さと精度が両立します。
まとめ
新設住宅着工戸数は3年連続で減少し、2025年度は前年度比12.9%減まで縮みました。建築コストと基準引き上げが背景にあり、大田区では狭小地や準防火地域という条件がさらに新規供給を絞っています。この環境は中古価格を下支えする方向に働くと見込まれますが、個別物件の評価を代替するものではありません。売り手はご自身の物件が新築の代替先になれるかを、買い手は二極化のどちら側にいるかを確認することが次の一歩です。
売る・買ういずれの判断も、まずは現在の水準を数字で把握することから始まります。大田区の不動産について40年の実績を持つ私たちが、査定から資金計画までトータルでナビゲートします。物件の種別、住所、間取り、広さ(平米数)などをお伝えいただければ、その場で今の見立てをお伝えできますので、お気軽にご相談ください。
